病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
 一気に甦った記憶のせいか、頭がガンガンと割れるように痛む。目を閉じても流れ込んでくる辛い記憶に、心臓の鼓動がドクドクと早まり、冷や汗が吹きだす。
 得意げにわたしに秘密を暴露する彼女は、黒髪に紫色の瞳が印象的な、オーベルシュトルフ侯爵家のディートリンデ様。そのよく動く赤い唇がわたしに告げた。

『あんたはここで、穢されて死ぬの。お気の毒なセシリア。それも一人二人でなく、何人もの、卑しい男たちの手で』
 
 ディートリンデ様の背後には、髭面で衣服も着崩れ、いかにも荒くれ者という男たち。みな、ギラついた下卑た目でわたしを見てニヤニヤ笑った。

『これが名高いブロムベルクの妖精姫かあ……本当に()っちまっていいんですか?』
『乱暴にしたら壊れちまいそうだな』
『おい、誰からする? 順番だぞ?』
 
 鉄格子の扉が開き、男たちが扉をくぐって近づいてくる。わたしは恐怖で鉄格子から飛びのき、逃げようとした。

『や、いや、来ないで……やめて、たすけて、ユード!』
『どこに逃げようってんだぁ?……大人しくやられてろよ』
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