病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
「もう……五百年も前の記録ですが……聖杯は意に添わぬ者に所有されると怒り、自らの居場所を示すために大地を揺るがす、と。怒りが大きければ大きいほど、揺れも、被害も大きいと」

 ラウレンツ卿の説明に、わたしは思わずユードを見た。昨年の地震でわたしは危ういところをユードに助けられ、それが結婚のきっかけになった。ユードもまた、困ったような表情でわたしを見た。

「……そんな理由の地震だったなんて……」
「ああ、もうよい。あるかないかわからぬ聖杯のことなど。それよりも――」

 陛下が話題を振りきり、言った。

「来年は朕もこの大聖堂で婚儀を挙げる予定だ。かねてからの婚約者であった隣国の姫がようやく成人を迎えるからな。その折にはそなたら二人も是非、参列するように。前方の席を開けておこう」
「は。ありがたき幸せでございます」

 ユードが頭を下げ、わたしもそれに倣う。
 陛下の結婚式に出た記憶はない。ということは、きっと、その前に我が家は破滅したのだ。
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