病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
「陛下、そろそろ還御を……」

 控えていた侍従が進み出て陛下に囁き、陛下が頷いて立ち上がる。

「では、失礼する。また皇宮にも参内し、母上の話し相手なども務めて欲しい。妖精姫ならば、母上もきっとお気に召す」
「ありがとうございます」

 前世の記憶にある皇太后陛下はとても気の強い方だった。そんな方のお相手なんて絶対に無理、と思いつつ、口には出さずにわたしは神妙に頭を下げ、陛下とラウレンツ卿の退出を見送った。
< 31 / 184 >

この作品をシェア

pagetop