病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

5、披露宴

 わたしたちは二人、馬車で披露宴会場となる我が家に向かう。途中、ユードがわたしを気遣うように尋ねた。

「体の調子はどうです?」
「……少し疲れました。陛下と直接お話するなんて初めてで」
「ああ……平民出の俺にも気軽に接してくださる」
「ラウレンツ卿は変わった方ね。突然、聖杯伝説の話をなさって」
「そうですね。……魔導師というのは、ちょっと浮世離れしているそうですし」

 辺境伯の跡取りと決まってから、ユードは皇宮にも何度か上がっている。――ユードを婿養子として送り込み、ブロムベルクを手に入れるオーベルシュトルフ侯爵の計画は、着々と進んでいるということだ。

 あと一年。わたしは最悪の結末を回避できるのだろうか。
 視線を逸らすわたしに、ユードが言った。

「披露宴、あまりに辛いようなら無理はしなくとも」
「いえ、オーベルシュトルフ侯爵と、ご令嬢のディートリンデ様にはご挨拶申し上げなければ」
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