病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
 しまったと慌てて口から指を出そうとしたけれど、ユードの指がわたしの口内をぐるりと回り、口蓋の裏をついと辿る。一瞬、ぞくっとした感覚が背筋を走り、わたしは無意識に身をくねらせた。

「可愛い……セシリア……」

 ユードがわたしに身体を寄せてきて、そのまま唇を奪われる。今日は抵抗する暇もなく、熱い舌が咥内に入ってきた。

「ふっ……んんっ……」
  
 ユードの逞しい体に半ば圧し掛かられ、わたしは彼を押し返そうと、腕を突っ張るが、抵抗もむなしく抱きすくめられる。
  
「だめ……」

 何とか顔を背けて肩で息をしているわたしに、ユードが言った。

「仮病まで使って俺を拒むなんて。なぜです? 俺は、貴女を怒らせるようなことをしましたか」
「言ってもしらばっくれるくせに」
「ディートリンデ様のことなら、誤解です。神に誓って何もない」
「でも、メイドは口説いていらっしゃった」
「……メイド?」
「赤毛の可愛い子ですわ。吹き抜けの回廊で」

 ユードの青い目が大きく見開かれる。
     
「わたし、あなたが信用できない。浮気者は嫌い」
「あれは――」 
 
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