病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

1、セシリアの現世

 わたしの父は、帝国の東方辺境を統べるブロムベルク辺境伯。
 数年前の流行り病で嫡男を失くし、妾腹の娘であるわたし、セシリアに婿を取り、後を継がせることに決めた。
 その婿として選ばれたのが、ユード・フォン・オーベルシュトルフ。オーベルシュトルフ侯爵の――養子だ。

 ユードは平民出身の騎士で、父は身分に拘らず、騎士としての技量と人柄を見込んでユードを選んだ。
 でも、皇帝陛下は辺境伯の跡継ぎが平民なのは問題と考えたのか、自らオーベルシュトルフ侯爵家に掛け合い、ユードを養子にさせた。その結果、東方辺境のブロムベルクと中央のオーベルシュトルフの、二大家の縁が結ばれることになり、皇帝陛下のご意向もあって、わたしとユードの結婚式は、帝都の大聖堂での、分不相応に豪華なものとなった。
 
 いわば、家の継承目的と皇家の思惑が絡んだ、純然たる政略結婚ではあるが、わたしにとってユードは密かな初恋の相手で、わたしはこの結婚を心から喜んでいた。
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