病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
 何しろ、ユードはとても美しい。

 灰色に近いアッシュ・ブロンドは少し癖があって、背が高く、細身ながら鍛えられた鋼のような肉体に、やや頬骨の高い整った容姿。精悍な眉の下、深い眼窩の奥の瞳は紺色に近い深い青で、森の奥に隠された湖のような静謐な輝きを湛えている。

 でも、わたしを見つめる視線には熱がこもり、見つめ合えば魂を絡めとられるような気持ちになる。
 低く甘い声に耳もとで愛を囁かれれば、それだけでわたしの脳まで溶かしてしまいそう。
 
 初めて出会った日から、わたしはユードに惹きつけられ、目が離せなかった。姿も声も立ち居振る舞いも何もかも、わたしの夢の騎士、まさに理想の男性だった。

 見かけだけではなくて、ユードはお父さまが後継者と見込むほどに剣にも優れ、頭脳明晰で、どんな時でも冷静さを失わず、そして誠実だった。――そう、最後の項目については、今の今まですっかり騙されていたわけだけど。

 よりによって結婚式の最中に、この隣に立つ理想の夫が、実は裏切り者の大ウソつきであることに気づいた。――というか、思い出した。わたしの、前世に起きた出来事を。
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