病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

9、建国祭

「建国祭の見物に出かけませんか」

 結婚式から数日。この三日間は、年に一度の建国祭で、帝都はお祭り騒ぎになる。 
 初代皇帝の即位記念を祝い、毎年、広場には屋台が立ち並び、中央の大樹が飾り付けられ、町の人々が贅を凝らした作り物の灯篭が意匠を競う。夜間の外出が許される、滅多にない機会だ。

 その見物に出かけようとユードに誘われて、わたしは頷いた。――前回も出かけたのを憶えている。
 初代皇帝は女神の息子としてこの地に降り立ち、死後は帝国の安寧を守る神として祀られている。結婚したカップルは最初の建国祭で、初代皇帝の霊廟に結婚を報告するのがこの国の習わしだから。

「いいけど、まだ敬語なの?」
  
 ユードが口元を押さえ、肩を竦める。

「申し訳……じゃなくて、す、すまない」

 ぎこちなく言い直す様子がおかしくて、わたしがクスリと笑う。
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