病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
 霊廟前の参道は祭りの喧騒で賑わい、たくさんの花で飾られ、屋台が軒を連ねている。遠くで、花火が上がった。

「帰りに縁起物の花飾りを買いましょう。屋台で何か食べても」
「そうね」

 あなたはディートリンデ様を送っていって、わたしはヨルクたちと帰ることになるのよ、とは口に出さず、にっこり頷いておく。
 霊廟の門をくぐれば、廟内は打って変わって神韻たる雰囲気に支配されていた。
 ――地上に降りた神、初代皇帝の力が内部に満ち溢れているような――

「ここはホッとするわ。初代様の霊力のせいかしら。空気が澄んでるの」

 わたしが廟の威容を見上げて囁けば、ユードも頷いた。
  
「貴女と二人、結婚の報告に来られるなんて、夢のようです」

 ユードがわたしの手をギュッと握り、微笑みかける。――本当にうれしそうに笑うから、ついつい信じてしまいそうになる。嘘が上手すぎるわ。
 
 お布施を払い、蝋燭を受け取って廟の奥へと進む。何組か、わたしたち以外にも新婚カップルがいて、初代の像に祈りを捧げている。わたしも蝋燭の火を大きな香炉に移し、聖印をきり、祈った。

 ――無事に離婚して、破滅を回避できますように。

 かなり心を込めて祈ってから目を上げると、ユードもまた真剣に祈っていた。ただでさえ彫像のような美貌が、魔力灯の淡い光に陰影が強調されて、ハッとするほど美しかった。
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