病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
「――あの二人が。……なぜ、秘密なのです」
 
 ユードが敬語に戻ったということは、ちょっと怒りが鎮まった?
 わたしは内心、ホッとしながら説明した。

「ヨルクは遠縁の、代官の一族だから、下級貴族なのは知っているでしょ? でも、アニーはブロムベルクの商家の出なの。ヨルクの父親は上昇志向の強い人だから、すんなり許可は出ないと思うの。それに、職場恋愛はあまり喜ばれないから、知られるとたぶん、配置換えされてしまうわ。機会を見て、わたしがお父さまに二人の結婚を願い出るつもりでいて……それまでは秘密にしようって……」

 わたしが上目遣いにユードを見上げて懇願すれば、ユードは深いため息をついた。
 
「……まったく、貴女と言う人は……」

 そして首を振って、わたしに言った。

「いいでしょう。でも、条件があります」
「条件?」
「俺の、本当の妻になるなら、ヨルクのことは不問に付します」
     
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