病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

16、記憶

「本当の妻……って、それは……」

 それは要するに、初夜を遂行するということだ。
 わたしは蒼白になって、身を固くする。
 
「そんな……だって、そうしたら……」
 
 凍り付いて俯いたわたしに、ユードが辛そうに尋ねた。
 
「そんなに、嫌ですか?……俺に、抱かれるのが」
「それは……そうではなくて……」

 嫌というよりは、抱かれたらきっと後戻りできないくらい、ユードに惹かれてしまう。
 わたしはかつての記憶を思い出し、身体の芯から熱くなってぎゅっと目を瞑った。

「セシリア。……俺の、我慢も限界なんです。貴女を愛してる。ヨルクを愛してるわけでないなら、俺を受け入れて」

 耳元で真剣な声で囁かれて、わたしはハッと顔を上げた。
 ユードは、わたしを愛していると言う。――昔は、それを信じていた。だから、なんのためらいもなく、ユードにすべてを捧げた。でも――
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