先生と私の三ヶ月
「シャンゼリゼ通りに行った時店に寄っただろ? その時に買ってホテルに届けてもらうように頼んでたんだ」
 
 先生が店に入った時、一流ブランドの店に足がすくんでしまって頑なに入店を拒否し、外で写真を撮っていた。

 あの時の買い物なんだ。一体何を買ったんだろう? 袋の中を覗くと、ローズレッド色の服らしきものが見えた。

「ディナーに着て来いよ。ここはジーパンTシャツで入れるようなレストランはないんだ」
 日本からずっと同じ服装だった事が恥ずかしい。

「でも、頂く訳には」
「いいから、早く着替えて来い。俺は腹が減ったんだ。二階のレストラン前で待ち合わせだぞ」

 先生は早足でエレベーターまで行き、私の目の前で意地悪く扉を閉めた。
 そういう子どもっぽい所が先生らしくて、微笑ましい。
 
 次のエレベーターを待っている間、待ちきれなくて紙袋の中からローズレッド色の服を取り出した。それはシンプルなデザインだけど、上品なデザインのワンピースだった。これを着て先生とディナーか。なんかデートみたい。
 
 急に胸がドキドキして来た。
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