先生と私の三ヶ月
 二階のレストランに先に着いたのは私だった。レストランの前で立っていると、私の前を通っていく人たちが視線を向けている気がする。特に男性によく見られる。このワンピース変なのかな ?似合っていないのかな?

 人目に晒されている事が恥ずかしくなる。先生にも変な目で見られるかもしれない。そう思ったらここに立っている事が怖い。

 帰ろうか。体調が悪くなったとかってレストランの人にメッセージを残せばいいよね。そうしよう。

 顔を上げた時、エスカレーターから真っすぐこっちに向かってくる先生が見えた。

 先生は黒いスーツに白いワイシャツで、ネクタイはしていない。先生のその姿に息が止まりそうになる程、ドキッとした。

 まるで映画の中のワンシーンみたいに先生は堂々と歩いてくる。豪華なホテルの内装も先生を引き立たせるただの背景のよう。

 なんでこんなに先生はカッコいいんだろう。
 仕事とは言え、こんなに素敵な人とずっと一緒にいたんだ。心臓がドキドキするのも当然だよね。

 先生に目を奪われていると、目の前で立ち止まった。

「俺がカッコいいからってそんなに見るな」なんて事を言うから悔しくなった。

「そんな事ちっとも思ってませんから」

 いつもの勢いで口にすると、先生は口の端を少しだけ上げ笑った。そして眩しい物を見るような目を向けて来る。

「な、何ですか?」
「似合うよ。そのワンピース」
 いきなり褒められるとは思わなかった。先生の言葉が嬉しくて、ついにやけそうになる。

「そ、そうですか」
 照れくさくて先生の顔が見られない。

「仕上げをしよう」
 先生が上着の内ポケットから箱を取り出した。

「仕上げ?」
「じっとしてろ」
 先生が私の後ろに立った。先生の長い指が私の首元に触れた瞬間、全身が震えた。
 驚いて、先生の方を振り向くと先生が優しく微笑む。

「ネックレスよく似合うよ」
 言われてから、ネックレスをつけてもらった事に気づいた。
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