先生と私の三ヶ月
「ガリ子の話が聞きたい」
 ウィスキーグラスを置き、先生が好奇心を含んだ目を向けてくる。

「私の話?」
「どうして結婚した?」
 うーんと首を傾け、グラスに半分残ったスクリュードライバーを見た。先生が私の為に頼んでくれたカクテルはウォッカとオレンジジュースを混ぜて作ってあるらしい。
 口当たりはオレンジジュースみたいで飲みやすくて、どんどん飲めてしまう。これでもう二杯目だ。

「ノーコメントで通す気か?」
 先生が茶化すように笑い、琥珀色のウィスキーを飲んだ。
 たったそれだけの仕草が絵になる程カッコイイ。イケメンはずっと見ていたくなる。

「俺には言えないぐらい複雑な話なのか?」
 カウンターに左肘をついて先生を眺めていると、先生が少し苛立ったように言った。

「先生って、やっぱりイケメンなんですね」
「はあ?」
「いやあ、こういうクラシカルなバーでウィスキー飲んでいる姿が絵になると思って」
「ガリ子、もう酔ったのか?」
「酔ってませんよ」
 あははと笑うと、「酔ってるな」と先生がため息をついた。
「酔ってませんって。えーと、なんで結婚したかですよね。父がお見合いの話を持って来たんです。それで、純ちゃんと会って気づいたら結婚していました」
「それで?」
「それでって、それだけです。結婚して5年、純ちゃんと何とかやってきました。子供はいませんが」
「ガリ子は」と先生は言いかけて「すまない」と何かを言うのをやめた。先生が何を言おうとしたのか物凄く気になる。
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