先生と私の三ヶ月
「そんな顔しないで下さい。もう過ぎた事ですから」
 カウンターの上の先生の手の甲に手を重ねると、先生が慰めるように私の手を握る。大きくて温かい手。今夜は先生の優しさに甘えたくなる。

「二度目の流産が酷くてもう子供は望めない体になったってお医者様に言われたんです。それからはもう純ちゃんに嫌われないように必死です。私の家族は純ちゃんしかいないんです」
 たった三か月の付き合いの先生に話すべきではないと思っていたけど、先生にはつい、いろいろと話したくなる。こんな風に思うのは酔ってるからかな?

「父はね、私が子供が出来ない体だってわかってから癌になったんです。母と二人で父の看病をしました。でも、癌になって一年で逝ってしまった。それから次に母が癌になって、今度は母の看病をしました。母も一年で父のあとを追いかけるように亡くなって……実は母の四十九日が終わったばかりなんです」
 あー、言ってしまった。先生はどう思った? 重たい女だと思った?
 先生の様子を見ると、先生が驚いたように息を飲んだ。

「ガリ子、お前、大変だったんだな」
 先生がしんみりとした表情を浮かべ、宥めるように私の腕をポンポンと撫でてくれた。先生の温もりを感じてほっとする。人の温もりってこういう時に癒されるんだ。

 先生はやっぱり優しいな。
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