先生と私の三ヶ月
「結婚してからいろいろあったんだな」
 低くて優しい先生の声が胸に沁みる。

 普段、人前で自分の事を話すのは苦手だけど、先生には弱い部分をさらけ出したくなる。

「はい。なんか一気に不幸が来たっていうか。私、一人っ子だから、もう家族が純ちゃん……夫しかいなくて。だから夫に捨てられるのが凄く怖いんです。本当は上海出張、私もついて行きたかったし、最初は一緒に行く予定だったのに、いきなり純ちゃんが一人で行くって言い出して……」
 言われた時の事を思い出したら胸が締め付けられた。
 唇が震え、喉の奥が熱くなって涙が込みあがってくる。必死で涙を飲み込もうとした。

「ガリ子。我慢するな。泣きたいなら泣けよ。俺が側にいるから」
 先生が私の肩を抱く。全力で守ってくれているみたいだった。そう思ったら、目の奥が熱くなって涙が溢れ出た。

 先生の前で泣くなんて恥ずかしい。
 けど、止まらない。

 BGMのショパンのワルツ第七番嬰ハ短調を聞きながら、先生の胸に顔を埋めて泣いた。
< 123 / 304 >

この作品をシェア

pagetop