先生と私の三ヶ月
「私も夫以外の人を好きになってしまって」
 こんな事、人には言えないと事だけど、打ち明けてくれた恵理さんに話さないのはフェアじゃない。

「その人、意地悪でめちゃめちゃな人なんですけど、物凄く優しくて。何だかんだ言いながら本当に私が嫌がる事はさせないし、いつも私の気持ちを一番に考えてくれるんです。私、夫の顔色ばかりみて来たから、いつの間にか言いたい事が言えなくなっていて。そんな私に、自分の気持ちを押し込めるなって言ってくれたんです。そんな事、言ってくれた人、初めてで。気づいたらその人と一緒にいるとドキドキしたり、幸せを感じるようになっていて」

 うんうん、と静かに恵理さんが聞いてくれる。
 話しながら先生への想いが強くなる。昨日よりも先生の事が好き。今すぐ先生に会いたい。

「実はその人と出会ってまだ一ヶ月ぐらいなんです。一ヶ月でこんな気持ちになるとは思わなくて。だから今、物凄く戸惑っているというか」

「時間は関係ないわよ。好きになる時は物凄い勢いで好きになっちゃうから。出会った瞬間に恋に落ちる事もあるし」

 その通りだと思う。5年一緒にいて純ちゃんには先生に抱えたような気持ちにはならなかった。結婚すれば好きになると思っていたけど、私の考えは間違っていた。きっと好きになる人は、運命のように決まっているんだ。

 それにしても、恵理さんも私もタイミングが悪すぎる。結婚した後に好きな人に巡り合うなんて。私たちはどうすればいいんだろう。
< 144 / 304 >

この作品をシェア

pagetop