先生と私の三ヶ月
 それからまたビールを飲みながら、恵理さんの話を聞いた。

 好きな彼とはこの7年の間に何度も別れて、別れる度に好きな気持ちが大きくなったと話す恵理さんが辛そうで、心配になる。

「その彼とはどうしても別れなきゃいけないんですか?」
「うん。だって私たち許される恋じゃないから」
 胸が痛い。既婚者の私の恋も許されないものだ。先生と体の関係がなくても、亡き両親には決して言えない。

「それで1年半前に、これで本当に最後だって言って別れたの。だけど今日、彼と会って。私、彼が会議に来るの知らなかったの。本当に不意打ちだった」
 恵理さんが四杯目のビールをお代わりした。お酒でも飲まなきゃやってられないわよ。と笑う恵理さんが痛々しい。

「彼とは仕事以外の話を?」
「うん。少しだけ」
 恵理さんの瞳がまた潤んだ。

「彼、私を愛しているって。片時も忘れた事がないって」
 涙に掠れた恵理さんの声が切ない。
 一年半離れていても、彼はまだ恵理さんが好きなんだ。それほど強く恵理さんを思っているんだ。なんか泣けてくる。なんて悲しい恋だろう。

「今日子ちゃんと約束してあって本当に良かった。実は彼に仕事が終わった後、会いたいって誘われたの。今日子ちゃんと会わなかったら、彼に会っていた。それでまた過ちを繰り返していた。今日子ちゃん、ありがとう」

 急に恵理さんが明るい声を出した。

「今日子ちゃん、そんなに心配そうな顔しないで。愛しているって言われても彼にハッキリともう好きじゃないって言ったのよ。さすがに彼も諦めたわよ。私の恋は今日で終わり。彼の事でめそめそ悩むのも終わり」
 恵理さんは来たばかりの四杯目のビールを豪快に飲み干した。
 私も、先生との契約が終わった後に、恵理さんのように気持ちに区切りをつけるんだろうか。
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