先生と私の三ヶ月
 先生の事を考えていると、様子を伺うようにこっちを見る純ちゃんの視線があった。ドキッとした。

 いけない。今は純ちゃんといるんだ。

「純ちゃんこそ、どうしてパリに? まさか私に会いに?」
 声がちょっとだけ上擦ったのを笑顔で誤魔化した。

「仕事だよ。フランスの会社とも一緒に今のプロジェクトを進める事になって。上海から出て来たんだ」

 純ちゃんがうんざりしたように、また息をついた。私にイラついていると言うよりは、疲れている感じがする。仕事で面白くない事があったんだろうか。純ちゃんの仕事は専門部署の人とやり取りする事らしく、衝突する事が多いらしい。

「ついでに妻の顔も見て行こうと?」
 沈んだ空気を少しでも明るくしたくて、あえて軽い調子で口にした。

「まあ、そんな所だ」
 目が合うと少しだけ純ちゃんが笑った。だけど、その笑顔が弱々しい。純ちゃん、きっと大変なんだな。出張中はそばにいてあげられないから心配。ご飯、ちゃんと食べているかな。一ヶ月前よりも、少しだけ顎が細くなった気がする。
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