先生と私の三ヶ月
「いやー、まいったなー。さっき電話した時は仕事してるって言ってたんだけどなー。先生、どこ行ったんだろう」

「あの」
 黒田さんに話しかけた。

「何でしょう?」
 黒田さんが私の方を見る。

「玄関の鍵、開いてましたよね? だから、家のどこかにいらっしゃると思うのですが」
 私の言葉に黒田さんがハッとしたような表情を浮かべた。

「僕、先生を探してきますから、一階のリビングで待ってて下さい。階段降りて右側の部屋ですから、すぐわかりますよ」

 黒田さんがドタバタと慌てた様子で部屋から出て行った。一緒に探しましょうかという言葉を言う暇もなかった。

「リビングか」
 たどり着けるかなと少し不安になるけど、私が一人で書斎にいるのも先生に悪い気がする。

 来た道を戻り、まず一階の玄関まで行った。

「えーっと、右側の部屋は」
 ホールにはドアが四つ並んでいる。

「ここか」
 焦げ茶色の一番立派そうなドアを開けると電気がついてた。

「失礼しまーす。うわっ、広っ! なにこれー!」

 私が住んでる2LDKのマンションの全部の部屋を合わせたよりも広い。入って正面には座り心地の良さそうな革張りのソファがあり、ソファの後ろはガラスの戸が並んでいた。足がガラス戸に引き寄せられるように進んだ。
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