先生と私の三ヶ月
 純ちゃんが戸惑ったような笑みを浮かべた。

「元気そうだな。安心したよ」
 日本酒が運ばれて来ると、今日子もどうだとお猪口を渡された。

 今夜はビールとワインでお腹いっぱいだったけど、夫の晩酌に付き合うのも妻の務めだと思い、日本酒を頂いた。

「お母さんを亡くしたばかりだから、今日子を上海に連れて行かなかったが」
 純ちゃんが日本酒を傾けながら、ポツリと話し出す。

「僕のいない間、小説家のアシスタントをやるとはな」
 純ちゃんが不満そうな表情でこっちを見る。

「今日子、住み込みって大丈夫なのか? 望月かおるって男だろ?」

 純ちゃん、もしや心配しているの?

「先生は私の嫌がる事は絶対にしない人なの。だから心配はいらないって」
「心配しているのはそっちじゃない。今日子がその小説家を好きになりそうで心配なんだ。昔から好きだった作家なんだろう? まあ、相手にもされないと思うがな。今日子はつまらないから」

 純ちゃんがバカにしたように笑った。
 好きになりそうと言われて、後ろめたさが増した。

 表情に出さないように笑って、お酒を飲んだ。飲みながら純ちゃんの発言を反芻したら、なんかムカッとする。今、私の事、相手にされないとか、つまらないって言った?
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