先生と私の三ヶ月
「今日子、お前のその服装も酷いな。パリにTシャツジーパンで来たのか? それって、部屋着で着ていたTシャツだろ?」
 カーッと頬が熱くなる。

「仕方なかったの。荷造りする時間がなくて」
「靴だけは高そうなの履いているんだな」
 純ちゃんがテーブルの下を見た。

「変な格好だな」
 ハハハと純ちゃんが笑い転げた。
 もう酔っているようだ。そういえば純ちゃんは酔うと私をよくバカにした。

「よし。今から買い物に行くぞ。いいのを買ってやる」
「純ちゃん、もうお店閉まっているから」
「そうか。閉まっているのか」
「もう。お酒弱いんだから、ほどほどにしなよ」
「確かに僕は今日子より酒が弱い。弱くても飲んだっていいじゃないか。僕だって一生懸命生きているんだ」
 あははと純ちゃんが陽気に笑った。完全に酔っている。
「はいはい。そうだね。純ちゃん、上海でちゃんとご飯は食べている?」
「ああ、何とか食べてるよ。でも、今日子の手料理が恋しいな。今日子のかき玉うどんが食べたい」
 甘えるように純ちゃんがテーブルの上の私の手に触れた。
 背筋がぶるっとして思わず手を引っ込めた。

「か、かき玉うどん。レシピ教えようか? 簡単にできるよ」
 逃げた事が後ろめたくて早口になる。

「いいよ」
 純ちゃんが不愉快そうに箸で冷ややっこを砕き、切れ長の目をこっちに向けた。私が手を避けたから、もしかして怒ってる?
< 152 / 304 >

この作品をシェア

pagetop