先生と私の三ヶ月
リビングに行くとサンルームの藤の長いすに腰かけて、先生が煙草を吸っているのが見えた。先生が煙草を吸っている姿を見たのは、初めてここに来た時以来だ。
声を掛けようとガラス戸に手をかけた時、先生の険しい横顔が見えて、手を引っ込めた。気楽に話しかけられる雰囲気じゃない。小説の事を考えているんだろうか。それとも何か悩みでも?
先生は謎が多い。私に気を許してくれる事も増えたけど、時々、気まずそうな表情で私を見つめている。何かを私に隠している気がする。それは先生の過去にある事なんだろうか? 例えば別れた奥さんの事とか。
先生は20歳の時に結婚して23歳の時に離婚したと、黒田さんが教えてくれた。それ以来先生は独身を通している。きっとまだ先生の心の中に別れた奥さんがいるからだ。
先生の小説に出てくるヒロインはもしかしたら元奥さんなんだろうか。恵理さんに聞かれてからずっとヒロインのモデルを考えていた。先生に聞けば済む事だけど、聞いたらいけないような気がして、まだ聞けていない。
立ち去ろうとした時、先生がこっちを見た。先生が煙草を灰皿に押し付け、手招きをする。
ガラス戸を開けると、先生がバツが悪そうに笑った。
「見つかってしまったな。真奈美には内緒だ。禁煙した事になっている」
「先生、禁煙しているんですか」
「流星がいるからな。煙草は子どもによくないだろう」
「流星君の事、大事に想っているんですね」
「流星の父親が出て行った日から、俺が父親代わりだと思っている」
やっぱり先生は優しい人だな。
「だから、流星が成人するまでは健康でいないといけないと思って禁煙したんだ。しかし時々吸いたくなる」
「吸いたくなるような事でも?」
「ガリ子はいじわるだな」
先生が私の腕を掴んだ。先生に引っ張られて、あろうことか先生の膝の上に座ってしまった。
声を掛けようとガラス戸に手をかけた時、先生の険しい横顔が見えて、手を引っ込めた。気楽に話しかけられる雰囲気じゃない。小説の事を考えているんだろうか。それとも何か悩みでも?
先生は謎が多い。私に気を許してくれる事も増えたけど、時々、気まずそうな表情で私を見つめている。何かを私に隠している気がする。それは先生の過去にある事なんだろうか? 例えば別れた奥さんの事とか。
先生は20歳の時に結婚して23歳の時に離婚したと、黒田さんが教えてくれた。それ以来先生は独身を通している。きっとまだ先生の心の中に別れた奥さんがいるからだ。
先生の小説に出てくるヒロインはもしかしたら元奥さんなんだろうか。恵理さんに聞かれてからずっとヒロインのモデルを考えていた。先生に聞けば済む事だけど、聞いたらいけないような気がして、まだ聞けていない。
立ち去ろうとした時、先生がこっちを見た。先生が煙草を灰皿に押し付け、手招きをする。
ガラス戸を開けると、先生がバツが悪そうに笑った。
「見つかってしまったな。真奈美には内緒だ。禁煙した事になっている」
「先生、禁煙しているんですか」
「流星がいるからな。煙草は子どもによくないだろう」
「流星君の事、大事に想っているんですね」
「流星の父親が出て行った日から、俺が父親代わりだと思っている」
やっぱり先生は優しい人だな。
「だから、流星が成人するまでは健康でいないといけないと思って禁煙したんだ。しかし時々吸いたくなる」
「吸いたくなるような事でも?」
「ガリ子はいじわるだな」
先生が私の腕を掴んだ。先生に引っ張られて、あろうことか先生の膝の上に座ってしまった。