先生と私の三ヶ月
　膝の上で先生に抱きしめられるような恰好になった。

「あの、先生。流星君たちがいますから」
　先生が近い。煙草の匂いと先生の気配に鼓動が速くなる。こんな所、真奈美さんや、黒田さんに見られたら恥ずかしい。

「俺は別に構わんぞ」
「私は構います。一応結婚していますから」
　先生が甘えるように私の胸に顔を押し付けた。

「せ、先生」
「寂しいな。あんな目に遭っても、ガリ子は旦那の事を気にしているんだな」
　黒い瞳が真っすぐにこっちを見上げた。
「俺との契約が終わったら旦那の所に帰るのか？」
「そこしか帰る所がありませんから」
「大丈夫なのか？」
「大丈夫です。あれは本当の純ちゃんではないですから。純ちゃん、私に会った次の日の朝、電話くれたんです。すまない。本当に悪かった。二度とあんな事はしないって、ずっと電話で謝ってくれて。物凄く反省しているみたいでした」
「旦那は次の日、青ざめたという訳か。そう言えば酔っていたと言っていたな」
「純ちゃん、お酒弱いんですよ。滅多に飲まないんですけど、あの日は日本酒を二合も飲んで」
「ガリ子はあんな事されて許せるのか？」
　胸がズキッとする。許そうとしているけど、まだ許せない。けれど、そんな事言ったら、先生に心配かける。

「許せますよ。夫婦ですから」
「そうか。なら、これ以上は俺が口を挟む事ではないな」
　先生が寂しそうに息をつき、ギュッと私を抱きしめた。
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