先生と私の三ヶ月
「葉月さん、お疲れ様です」
 編集部に行くと、スーツ姿の黒田さんが出迎えてくれた。では、こちらでと黒田さんが応接室に連れて行ってくれる。

 本当は私が先生の所に行くつもりだったのですが、どうしても外せない予定が入ってしまってと、黒田さんが申し訳なさそうに言った。

「それで、こちらが先生に頼まれていた資料になります」
 黒田さんが茶色の紙袋をテーブルの上に置いた。
 中には本とか、印刷物が入っている。

「本当、葉月さんにわざわざ取りに来て頂いてすみません」
 黒田さんがさらに申し訳なさそうに頭を下げた。

「いえいえ。これもアシスタントの仕事ですから」
「もしかして、望月先生のアシスタントなんですか?」
 華やいだ女性の声が入口からした。
 顔を向けると大学生ぐらいの可愛らしい子が立っている。
 スラッとしていて、モデルさんのように細い。

「上原さん、いきなり口を挟まないで下さい」
 黒田さんが女の子に注意をした。

「あっ、すみません。私も望月先生のアシスタントしていたから、つい」
 そう言いながら女の子が私の前にお茶を置いてくれた。

「失礼しました」
 礼儀正しそうにお辞儀をして上原さんと言われた子は応接室を出て行った。

「すみません」
 黒田さんが謝った。

「いえ。全然。あの、今の方は私の前に先生のアシスタントを?」
「ええ、まあ」
 黒田さんが気まずそうな顔をした。

「えっと、私はもう出ないと。葉月さん、では、よろしくお願いいたします」
 黒田さんが逃げるように応接室を出て行った。
 前のアシスタントの事は聞いてはいけないのかな?
< 195 / 304 >

この作品をシェア

pagetop