先生と私の三ヶ月
「せ、せんせい」

 驚き過ぎて口をパクパクと動かしていると、先生は再び目を閉じた。
 それからスーと寝息を立てる。

 今の何?

 好きだって言った?
 私に言ったの?

 えー、うそー。どうして?
 先生に会ってたったの一週間しか経っていないのに。

 も、望月先生は私の事を――好きなの?

 ど、どうしよう。

 私は結婚しているのよ。純ちゃんがいるのよ。

 やだ。なんかにやにやしちゃう。
 全然嬉しくないのに、頬が緩んじゃう。

 好きだなて。そんな、そんな……。
 純ちゃん以外の男の人に初めて言われた。
 
 これが告白ってやつ?

「うーん。好きだ。ひなこ。むにゃむにゃ」
 先生が寝言のように言った。

 好きだ。ひなこって何?
 
 今のって寝言だった?

 まさか私をひなこって人だと思って好きだって言ったの?
 もうー! 人騒がせな!

 パンっと強く先生の肩を突いて、先生の腕から抜け出した。それでも先生は起きない。
 全く、どんだけ深い眠りなのよ。

 もう知らない。
 先生に背を向けて、書斎を出た。
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