先生と私の三ヶ月
「パパ、外国にいるの?」
「うん。だから会えないんだ」

 流星君の顔が寂しそう。パパに会いたいのを我慢しているのかな。離婚したって、流星君にとってパパには違いないよね。なんで会わせてあげないんだろう。

「たまねぎ、こんぐらい?」
 流星くんが私の方を見た。

「えっ、うん」
 フライパンの玉ネギは綺麗な飴色になっている。

「流星くんバッチリだよ」
 流星くんが嬉しそうな顔をする。なんかその笑顔が切ない。こんなに幼い子が複雑な事情を抱えているなんてやるせない。

「ねえ、流星くんはパパに会いたい?」
「会いたい。でも、パパは外国にいるから会えないよ」
「外国にいても電話でお話ぐらいは出来るよ」
「お話できるの?」
「うん。ママに頼んであげようか」
「ほんと?」

 流星くんの表情が輝き出した。やっぱりパパに会いたかったんだ。もしかしたら、離婚してから一度も父親に会う機会がなかったのかもしれない。こんなに小さな子が父親に会えないのは可哀そう。複雑な事情があるかもしれないけど、流星くんと父親が会えないのは大人の都合だ。何とかしてあげたい。

「ママは流星くんを迎えに来るの?」
「うん。明日のお昼に来る」
「じゃあ、その時お姉ちゃんが頼んであげるね」
 余計な事かもしれないけど、私が流星君の為に出来る事はしてあげたい。
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