先生と私の三ヶ月
「何でしょうか?」
 インターホンに出ると、モニターに見覚えのある中年男性の丸顔が映る。
 黒田さんだ。えっ? 何?

「黒田です。大事な話があります」
 モニター越しの黒田さんはなんか深刻そう。
 黒田さんがそんな顔をしているって事は望月先生に何かあったの?

「今、開けます」
 共用玄関のオートロックを解除した。少しして、部屋のインターホンが鳴った。

「葉月さん、パスポートは持ってますか?」
 ドアを開けると、いきなり黒田さんに聞かれた。

「えぇ、ありますけど」
 新婚旅行の時に作った10年用のが確かあったはず。

「良かったー」
 黒田さんがめちゃめちゃほっとした顔をする。

「葉月さん、緊急事態なんです。パスポートを持って私について来て下さい」
「ついて行くって、どこですか?」
「説明している暇はありません。出かけますよ」
「は、はい」
 緊急事態という言葉に望月先生の事が心配になる。慌ててスマホと財布を持って部屋を出た。
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