先生と私の三ヶ月
『人生って出会いと別れの繰り返しね』

 恵理さんに託された望月先生の小説に出てくる一節を思い出した。

「だから人生って愛しいのよ」

 思い出した一節に続く主人公の言葉を口にした。胸がすっと温かくなる。好きなシーンに出てくるセリフだった。このセリフを望月先生はどんな風に考えて書いたんだろう。

 望月先生と出会った事も、今、私の人生の一部になっている。先生と出会って、今日で一ヶ月。

 本当に毎日が慌ただしくて、腹が立つ事がいっぱいだった。初めて先生に怒りをぶつけた時、つい先生に水をかけてしまった。自分でもびっくりした。普段の自分だったらじっと怒りを我慢するけど、先生を見ていたら何だか憎らしくて、コップに入っていた水を思いっきりかけた。純ちゃんになら、絶対にできないのに、望月先生には出来た。

 自分でも不思議だ。先生になら、素直に感情をぶつけられる。初めて出会った時から、先生は昔から知っているような人に思えた。先生の小説を読んで来たからそう思うんだろうか。

 今頃、先生はモンサンミッシェルでどうしているだろう? 黒田さんから私が向かった事を聞いて、待っているだろうか。それとも怒ったままだろうか。

 先生に会うのが怖い。だけど、堪らなく先生に会いたい。
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