先生と私の三ヶ月
 島内のホテルは数が限られているから、どこも満室なのは当たり前で、当然、先生が泊まっているホテルも、私の部屋なんか取れるはずがない事は理解できる。
 
 でも、先生と同室だなんて……。

「俺と同じ部屋で寝るのがそんなに嫌か?」
 フロントで鍵を受け取った先生が、隠れるように壁際に立つ、私の前に立った。

「あの、先生は本当にいいんですか?」
「いいも悪いも俺とお前が同じ部屋に泊まる。この選択肢一択しかなかろう。まさか、俺に野宿しろと言うのか?」
「い、いえ。滅相もございません。あの、野宿なら私が」
「バカ! 女一人を外で寝かせられるか。さっきも言ったが何があるかわからんだろう」
「念の為聞きますけど、24時間営業のネカフェとかは」
「ある訳ないだろう。ここは田舎なんだぞ」

 先生の言う通り。選択肢は一択。今夜は先生と同じ部屋に泊まるしかないみたい。よく考えてみれば半月、横浜の先生の家で一緒に暮らしていたし。先生とは生活を共にしていた仲なんだから、同じ部屋に泊まるのだって、何ともない事。私はアシスタントで、それ以上でも以下でもない。きっと大丈夫。

「わかりました。では、ご一緒させて頂きます」
 覚悟を決め、先生と一緒に青い絨毯が敷かれた螺旋階段を上る。
 ホテルは古い建物でエレベーターがないようだった。

「着いたぞ」
 先生が三階の階段から一番近い部屋の前で立ち止まり、鍵をガチャガチャと鍵穴に入れて、ターコイズブルーのドアを開けた。

「入れ」
 先生に続いて部屋に入る。

 えっ、これは――!

 せ、狭い……。

 部屋にはでーんとダブルベッドが一つに、ソファと、机があるだけ。後は、ユニットバスがある。

 どこで寝ろというの? ソファ? それともバスルーム?
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