先生と私の三ヶ月
「ガリ子がベッドを使え。疲れているだろう。俺はソファでいいから」
「ソファ狭いですよ。先生の長い足が収まりません。私はあの、邪魔にならないようにバスルームで寝ますから」
 可笑しな事を言ったつもりはないのに、先生が口元に拳を当てて、クックックッと笑い出した。

「ガリ子、いくら夏でもバスルームで寝るのはどうかと思うが」
「だって同じ部屋で寝るのは何というか、躊躇われるというか」
 まだバスルームで眠った方がいい。先生と同じ部屋だなんて緊張し過ぎて息も吸えない。

「お前も女なんだな。そういう事を気にするのか。大丈夫だよ。襲ったりしないから。同意のない行為はしない」

 同意のない行為……。それって……。

 ベッドの上で裸の先生と抱き合っている姿が浮かぶ――うわっ。な、何考えているの! 先生と私の間でそういう事がある訳ないのに!

「エッチな奴だな。赤い顔をして。もしかして、俺としたいのか?」
 心臓がびっくりして、耳の奥までカァァっと熱くなった。

「は、はあ? 何言ってるんですか? そんな訳ないでしょ!」
 大きな声で言い返すと、先生が私の反応を面白がるように口の端を上げた。背中がゾクリとする程、色気のある表情……。目に毒過ぎる。

 先生を男性として意識してはいけないと思う程、意識してしまうから困る。私は捻くれているのか? いや、私が悪いんじゃない。先生が無駄に色気があって、私好みの綺麗な顔立ちをしているからいけないんだ。そんな先生と今夜はこの狭いシングルルームで2人きりだなんて、ドキドキし過ぎて死ぬ。やっぱりバスルームで寝るしかないじゃない。
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