オー!マイ・ハワイ!
「日本に帰ってからのこともそうだけど、いまあなたの心は修二でいっぱい。そうでしょ」

「修二と私、昨日会ったばかりだし、婚約者のフリをする約束しかしていません。修二は、ただの遊びだと思うから……」

「ずいぶん自信をなくしてるのね。強気なあなたのままでよかったんじゃないの?」

「そう思いますか?」

「もちろん。危なっかしくて猪突猛進。それが高山まなみでしょ? 失敗することもあるかもしれないけれど、結局はこうしてうまくいくのだから。自分の想いに素直なあなたでいいのよ」

「素直な私で……」

「そうよ。あなたが、修二を優しく包みこんでくれたら、私も嬉しいわ」

まなみはソファの背にドサっともたれると、庭で遊んでいる修二を見た。無邪気に犬と庭を走り回る姿は、子どもみたいにかわいく思えた。「まなみ、そのつっかえたものをとっていくといいわ」

「なんですか、それ」

「隆史に対する怒りね」

「私、怒ってなんかないですよ?」

「隆史のことが、本当に大好きだったのね。相手を尊重するあまり、自分を押し殺しすぎたのよ。ここは高台だから、終わったらそこから思いっきり吐き出していきなさい。あなたは怒っていいのよ」

まなみは婚約破棄のことで、一度も怒っていなかった。周りの人が怒るので、怒れなかったというのもあるが、悲しみが大きすぎて怒りまで湧いてこなかったのが本音だ。

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