なにもしらないきみへ

なにもしらないきみへ

「柊花はコミュ力高い!まじで話しやすい」
褒め言葉は誰かに認められ、羨まれる証拠の最たる例。そして私の一番の精神安定剤。
「ありがとう」
そんなことないよ、と言えば嘘になる。ただ、培い方は他にはきっと言い難い。
河野柊花、17歳。好きな食べ物は梅で、嫌いな食べ物はトマト。美味しいものは最後に食べる派。

元彼?30人。

そんなことこれから出会うどんな男の人にも言えたものじゃないけれど、きちんとした告白、返事、交際期間という過程を経たのが元彼にカウントされるというのであれば、2月に別れた彼で39人目。
待って待って、勘違いしないでね?男たらしだとかそんなこと言われる筋合いはない。その元彼の中には多くネット恋愛を含む。
SNSは楽しい。本当の自分のほんの1部分、可愛いところだけをたくさん詰め込んだパックを公開するだけで色んな人からの人気が得られる。
高いと褒められるコミュニケーション能力はそこで培った。誰とでも話せる世界、誰とでも恋愛に発展する世界。

大好きなママに咎められた世界がそこにあった。

ヴーッ、ヴーッ
「こら誰だー、授業中だぞ」
「ゴメンナサーイ」
私が私としての地位を築けたのにはそれはもう多大なる努力が、なんてことはない。余裕だった。
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