笑顔が消える
あの紙

「本当にすまない。」
と、言う俺に
「だから、やめて下さい。
意味のない謝罪は。
お義父様とお義母様は
私に謝罪をしていました。
でも、きっと私にも
何があるからあなたは
田中さんに気持が動いた。
だから、謝罪はいらないと
三嶋のご両親には
お伝えしました。
これも見て頂きました。」
と、言って
彩代が開いて見せた紙は
ボロボロな紙だった。
それには、

【 浮気は、しません。
 もし、まんがいち
 彩代より修也より
 好きな人が出来たら、現れたら
 必ず告げて、きちんとしてから
 (別れてから)行く事を誓います。

           三嶋 修也
           柳瀬 彩代 】

と、書かれていた。

「忘れていた?
あの時は、そんな事
絶対ない。
と、二人で笑いあったよね。
私は、あなたがいつ話してくれるか
待っていたの。
そりゃ、簡単に納得できない
と、思っていたけど。

あなたは、平気で嘘を言い。
平然とした顔をして帰宅する。

家族の新しい住まいを
探していたのに
彼女と田中 美弥さんと
暮らす家を探していた。

私は、そんなに馬鹿にされないと
いけない事した?
あなたが、一所懸命頑張って
くれていたから
私も必死に子育ても主婦としても
頑張って来たつもりでいた。

でも、それは私が勝手に
思っていただけなの?
他の女に目が行くほど
つまらなく軽視されていたの?

あなたは、私の言葉も耳に
入ってなかった。
その上、マンションを見に行けと
私、本当は行きたくなかったの。
あなた達は、
見え見えのアイコンタクトをとり、
あなたは、何度も
美弥さんの名前を呼んでいた。

誤魔化したつもりだった?

彼女が必死に説明しているのに
何も言わない私にイライラして
私にあたるあなたに
私は、あたられないと行けなかったの?

こんなにまでも
二人に馬鹿にされて。
素敵ね。すごいわね。
と、言わないと行けなかったの?

あなた、同じ立場だったら
できるの?

·······ごめんなさい。
こんな事言うつもりなかったの。

静かにしていますから書いて下さい。」
と、言う彩代に
どう言葉にして伝えたら良いのか
わからずに頭を横に振る。

そんな俺を置いて彩代は、
奥の部屋に行き
キャリーケースを
引いて戻ってきた。

「私は、今日出ていきます。
私の荷物はありませんので
後は、あなたが好きにされて下さい。
田中さんと。
あっ、私が言う事では
ありませんね。

えっと、あなたが離婚届を書いて
くれないときは三嶋のお義父様に
連絡することになっていますが
連絡して宜しいですか?

それから、私をこの五年間
ずっと心配して
支えてくれた方がいます。

その方の事が
私の中で大切な存在になりつつ
あります。
きちんとしてからと思っていました。
それでは。」
と、言うと
彩代は、玄関へ行き
そのまま出て行った。
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