笑顔が消える
出逢い②

太智さんのカフェ
Cafe-tasteに、綺麗な女性がいた。

ニコニコと笑顔でお客様に接して
デザートを作ったり
見ていて気持ち良い女性だ。

女性に興味のない俺が
目を止めたのを
太智さんは直ぐに解り
「やはり、暁の目は凄いな。
彩代ちゃんは、良い娘だよ。
まあ、既婚者だけどな。」
と、言われて。

とてもがっかりした。

いや、嫌嫌、あり得ない。
俺は、女性が苦手なんだから······

だが、やはり·····俺には
と、思ってしまった。

でも、いつ行っても
「いらっしゃいませ。」
と、席を案内してもらい
なんどか通う内に
太智さんが、俺を三嶋さんに
紹介してくれた。

それからは、
声をかけてくれるようになった。

本当に女性が苦手だ。
やたらと話しかけてくる女性従業員や
保険会社の女性、清掃の人達
お客様の関係者
そんな時は、かなり疲労を感じる。
支店長なるもの嫌な顔もできずに
笑顔を貼り付ける。
香水の匂いが酷い人は
吐きけも感じるほど。

そんな時、三嶋さんに会うと、
ほっとして、息がつける。
「顔色よくないですけど
  大丈夫ですか?」
と、声をかけてくれる。
他の人には、わからないのに。
「ありがとうございます。
三嶋さんのデザートは、
今日は、なんですか?」
彼女の作るデザートを食べて
元気になろう。

彼女は、男性には、女性と
少しだけ味を変えて作ってくれる。
甘すぎず、とても美味しい。
彼女の夫である人を
どんなに羨んだか、わからない。

そんな彼女の笑顔がくすんでいる。
笑顔でお客様に接しているが。
どこか寂しげで、
どこか辛そうに見えて
思わず声をかけてしまった
「何かあるのでしたら
私で良ければ話して下さい。」
と。
彼女は、ひどく驚いた顔をして
「ありがとうございます。
だめですね、お客様に心配かけては。」
と、言うから
「そんな事ない。
人間なんですから
色々あって当然です。」
と、思わず力説すると
三嶋さんは、クスっと笑うから
「あっ、すみません。」
と、言うと
「ありがとうございます。
小野さんのおかげで元気になりました。」
と、言ってくれたが······

それからの彼女は、
もっと、辛そうになって行った。
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