笑顔が消える
田中 美弥と母・美津

赤木弁護士の事務所に入ると
ガタイの良い男性が
修也さんを殴り飛ばした。

驚きと心配で修也さんに
駆け寄ると
その男性から
触るなと叫ばれた。

修也さんのお子さんだ。

そんな彼を奥様の彩代さんは、
抱きしめて、謝っていた。

こんな事を子供にさせる
言わせる事の情けなさ
どんなに子供達を傷つけたかを
改めて思い知る。

私は、修也さんが既婚者だと知っていた。
その上で、この関係を五年も
続けてきた。
愛されていると錯覚をして。

奥様やお子さん達が
どんな思いで過ごしていたか
なんて·····考えてもいなかった。

どんなに考えても
私が悪い
母も辛そうな顔をしている。
母親にこんな思いをさせるなんて。



母・美津は、
美弥には、あん風に言ったが
美弥を五年間も立ち止まらせた
男性に対して
正直、怒りがあった。

だが·····

今日の出来事に
心が締め付けられる。

なんにも関係ない奥さんを·····
お子さん達を·······

やはり·······
誰も幸せになれない道に
進んだ我が子が悪い。

申し訳なさでいたたまれない。

奥さんは、美弥を一度も
見ることはないが
私にはきちんと目を向けて
詫びてくれた。
出来た方だと改めて思った。

美弥が、同じ事をするとは
思わないが、もし、同じ事が
起きたら、その時は切る。

美弥を·····

それだけを心に刻み
弁護士事務所を後にした。
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