笑顔が消える
三人の子供達

空也······

まさか、星也が父親を殴り飛ばすとは
思っていなかった。
思いやりがあって温和な弟の
違った一面を見た。

まあ、俺達三人は、
母さん子には、間違いない。

父も子育ても協力的だと
母は、言っていたが
病気をした時
怪我をした時
辛いとき、悲しいとき
嬉しいとき
ずっと、寄り添ってくれたのは母だ。

学校行事も全て母
料理も美味しくて
お弁当も自慢だった。

自分達の生い立ちを
話すときに母に感謝の気持ち以外はない。

優しくて綺麗で
本当に自慢の母だ。

そんな母を
俺がしたことは、母を苦しめる事になる
と、何度も悩んだ。

だが、真代から連絡を貰い
じいちゃん(三嶋の修)に
連絡をして話しを聞いて貰った。

じいちゃんにも辛い話だと
思ったが、じいちゃんしか頼れなかった。
じいちゃんは、
「少し、時間をくれ。
空也は、お母さんを気にかけて
上げなさい。」
と、言ってくれた。

この会議室は、
涙と行き詰まりそうな空気が
流れている。
相手の女性の母親も
辛そうな顔をしていた。

弟や妹が、俺の代わりに
言いたい事は全て言ってくれた。

本当に頼もしい。
不甲斐ない長男ですまん。


真代····

星也には、びっくりしたが
正直、気持ち良かった。
お母さんは、あんな痛みじゃない。
殴られたのは、日にちが過ぎれば治る。
だが、心の傷は、簡単ではない。
まして、五年も。

私は、言いたいことは
言わせて貰った。

相手の女性にも
肝に免じて欲しい。

貴方達、二人がやってきた事は
これほど大変な事なんだと。

倒れて、やっと起き上がり
座った父親に
誰も声をかけることはない。
あの女性が近づくのを
星也が止めたから。

弁護士の赤木さんが
冷やしたタオルを事務の方に
頼んで持ってきて貰い
それを父親は、頬にあてていた。


星也·····

兄や姉からきいてびっくりした。

あんなに母さん、母さんと
母さんにべったりだった父が。
浮気······?·····

どうなってるんだと
じいちゃんに書類を見せて貰った。
なんだ、あの男の髪型は?
狂っている。
50を過ぎて55になる男の頭か?

とにかく母が心配で
二、三日休みを貰った。

人を救助することはあっても
殴ったのは、初めてだ。

飛んでいく親父に
涙が溢れる。

俺は、ならない。
人の人生に責任が、
もてないなら初めから
結婚なんてしない。 
いや、するべきではない。

詳細の説明があり
じいちゃんの話しがあった。

俺は、駐屯地に戻る前に
じいちゃん宅に寄るからと
じいちゃんに伝えて
母さん達と弁護士事務所を後にした。
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