笑顔が消える
あれから••田中 美弥

美弥は、赤木弁護士事務所を
母と無言で立ち去る。

母に辛く悲しい思いをさせて
しまって本当に申し訳なかった。

修也さんの奥様
修也さんのご両親
修也さんのお子さん達に
ただ、ただ、申し訳ない気持ちで
いっぱいだった。

母と電車に乗り無言で帰宅した。
皆が揃ってから
母が今日の話しをした。

父・道夫は、無言で聞き
弟・優は、呆れていた。
義理の妹・麻衣は、どうして良いか
分からない感じだった。
「嫌な思いをさせてごめんなさい。
仕事も辞めたけど
私がここにいない方が
良かったら、仕事見つけて
生活しようと思っている。」
と、言うと
「その方が良いかもな。
五年もの間
人を苦しめてきたんだ。
そんな簡単にはいかないよな。」
と、優が言うと
麻衣が
「優ちゃん。」
と、止めるから
「いいの。ありがとう麻衣ちゃん。
お母さん、ごめんなさい。
お見合いの話しは、
丁重にお断りして下さい。」
と、両親に頭を下げる。
母・美津も今日の事で
娘が大変な事をしたと
改めて思い知らされた。
夫の道夫も苦渋な顔をしている。
このまま、ここに置いて置くと
美弥自体も辛いと思った。

美弥は、皆に頭を下げてから
自分の荷物を取り家を出た。

直ぐに麻衣ちゃんが追ってきて
「お義姉さん、送ります。」と。
身体的にも疲れていたからか
美弥は、
「ありがとう。助かる。」
と、言って駅まで送ってもらった。

車の中で話すことを躊躇う麻衣
美弥も窓から外を見ていた。

駅に着くと
「麻衣ちゃん。
本当にありがとう。
父さんとお母さんをお願いね。」
「お義姉さん。」
と、心配顔の麻衣ちゃんに
大丈夫だよの意味で頷いてから
駅の中に入って行く。

一度、マンションへ戻り
神奈川県の鎌倉市に仕事を見つける。

KAMAKURAホテルに就職できた。
営業好きな私を活かす事ができれば
と思った。
それに、土日も休まずに住む
大型連休やお休みに
帰る実家もない。
一心不乱に働いた。
働く事は好きだから
苦にならなかった。

入社三年目には係長になり
いっそう精進した。

三年間、一度も実家に帰ってない。
連絡も取っていない。
幾度かお母さんから連絡が
あったがでることも
折返しもしていない
でれば····
声を聞けば·····
帰りたくなる。
だから·····

新しい住所も知らせていない。
ただ、麻衣ちゃんとは、
ラインのやり取りをしている。
麻衣ちゃんにお願いされて。
二人だけの内緒。


仕事が楽しくて仕方ない。
もう、恋愛は懲り懲りだと
一人暮らしを楽しんでいる。

両親の体調が悪くなり
麻衣ちゃんから連絡があって
帰省したが、長いはしなかった。

自分が必要とされていないのが
わかっていたから·····
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