笑顔が消える
あれから••三嶋 修也

東北へと異動して
とにかく寒いに尽きる。

両親ともあのまま
疎遠となっているが
定期的に近況の手紙、
ハガキを送っている。

彩代を裏切ったくせに
美弥と一緒になる気持ちは
まったくなかった。

それならどうして
美弥と浮気をしたんだろう

家族を失い
もっとも大切な妻を失い

俺は·····いったい·····何を······

異動してから
必死に働いた。

言葉を覚えたり
得意先の情報を頭に入れたり
社内の人達と連携をとったり

あっという間に
一年が過ぎていた。

二年目に入ると
社内外でも認められるようになってきた。

慣れない間は必死だったから
わからなかったが
少し余裕が出てくると
一人の寂しさ
泣けてくる
自分が仕出かした事なのに。

そんな時に父からハガキが。
裏を·····みると······

·······さ·····よ·····?

ウェディングドレス姿の彩代
彩代の横にはイケメンの男性
彩代の横には、
彩代の母親と兄夫婦。

男性の横には年配のご夫婦
前に三人の子供達と香菜恵さん夫婦
彩代達の後には数名の男性達

皆、笑顔だ。
輝く程の笑顔だ。

父親から、
彩代さんとバージンロードを歩いたよ。
彩代さんの幸せな笑顔に
心からホッとした。
と、書いてあった。

父と?
彩代が自分じゃない違う男性を
選んだ事に落胆があった
あの時に話していた人だろうか?

自分は、五年もの間
好き勝手やってきた癖に
彩代が別の男性を···と思うだけで
胸が締め付けられる。


俺は······

 それからより一層
仕事ばかりの日々を過ごした。

休みの日は、掃除洗濯
料理というか簡単な物は
作れるようになった。

携帯で何度も調べて
失敗を繰り返して

彩代が作ってくれたようには
なにもかもできない。

彩代を思うと
たまらない気持ちになる
どうして····なぜ······と

不思議?なのが·····
美弥の事を思い出す 
そんな事は、まったくなかった。
残酷な人間だと思う

二人の五年間を······

修也は、仕事はできる
見た目も良いから
見合いの話や
声を掛けられる事はあったが
全て断っていた。

人の人生を苦しめた自分が
幸せになる事は·····

それにそんな気持ちが
まったく湧いて来なかった。

数年後、父から
空也が実家の近くに
結婚して家を建ててくれた。

だから、お前は
お前の好きなように生きなさい。
と、連絡が来た。

親にも見放されたか·····
と、思ったが

空也から
俺や母達を見るのは
辛いだろうと
じいちゃんは、思っているのだからな。
と、ハガキが。
両親と空也の家族の写真付きで。

彩代の事だ。
俺を気にしながら
俺の両親を心配してくれているんだろう。

空也には、
東北の風景写真と
結婚 おめでとう。
それから、両親の事頼む。
すまない。
と、送った。

修也は、その後も独身を通して
亡くなってから
三嶋の墓に戻った。

三嶋の両親に叱られながら
ホッとしているだろうと。
空也は、そう思っていた。
< 55 / 57 >

この作品をシェア

pagetop