破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「……可能では、あるよ。あんたんとこの魔術師が、有能で助かったよ。この子を忘れていて、それを思い出させるんだから、呪術を解く薬を作るには彼女がどうしても必要だったからね。この森を抜けるくらいの、気概のある根性のある女の子で助かったよ。私は、これから薬を作る下準備を整えているから……あんた達に、頼みたい事がある。この近くにある沼の中に生える薬草が要るんだよ。しかも、採れたての新鮮なのが」

「……行くわ!」

 思わず大きな声を出してしまった私に驚いて、二人は目を見開いて驚いていた。気合いを入れたことが恥ずかしくて顔を俯けると、グウィネスは微笑ましそうにして笑った。

「そんなに、とても好きなんだねぇ。こっちのボールドウィンさんも割と良い男だけど、そっちが良いのかい?」

「こちらは、元彼なんです。そっちが良いです」

 グウィネスは私の答えを聞いて、驚きにやにやとした笑みを浮かべた。彼女の中で何かが、俄然盛り上がったようだった。

「はー……こちらが、元彼かい。そんで、お嬢さんの事を忘れてしまった男の方が……良いと……」

「その……沼の場所を教えて貰って良いですか。早く取りに行きたいんで」

 クレメントは呆れた顔をして、何処か違う世界に行ってしまっているグウィネスに冷静に尋ねた。

 私もそれを、早く知りたかった。何なら、取るものもとりあえず、今すぐ走って行きたいくらいだから。

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