破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 コンスタンス様って、騎士と比べてしまうと細い体躯の王子様だけど、結構力あるんだ……軽々とラウィーニアを運ぶコンスタンス様の背中を見て、そんな余計な事を考えたりした。私はランスロットに手を引かれて、彼らが不思議な力で甲板まで上がってきた場所にまで歩いた。

「……ねえ、ランスロット。彼らは、どうなるの?」

 無言の彼に手を引かれている私は、厳しい雰囲気を崩さないランスロットに聞いた。

 さっき、ジェルマンの捕縛はと彼は言った。この船に残る事になる大勢の船員たちは、どうなるのだろうか。

「……聞かない方が、良いですよ。国を治めている王族を狙うのは、レジュラス……いえ。ほとんどの国家でも重罪です。ここに来るまでの殿下の怒りを思えば……反逆者ジェルマンに雇われただけの彼らのためにも、ある意味では温情と言える処置なのかも知れません」

 ランスロットは、皆まで言わなかった。けど、私にも何となくはわかった。

 ジェルマンの企みを知った上で加担していたのか、どうなのか。それは、もう。あまり問題ではないのかもしれない。

 ただ、ラウィーニアを攫った。攫おうとした。それだけで、怒りを買うには十分だ。だって、コンスタンス様は次の王座を約束された人だもの。

 法により、とんでもない事をしでかした重罪人は裁かれるだろう。

 ランスロットが先を行っていたコンスタンス様から目で合図を受ければ、見る間に海面から白い氷が嘘のような速度で積み重なり船の上に居る私たちを迎えに来た。

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