破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 遠い目で過去を思い出すような彼女に、私は肩を竦めた。

「そうかも。もし、そうだったとしたらね。でも、ランスロットは今は私の婚約者だから。また誰かが何かを言って来ても、きっと返り討ちにするわ」

「お嬢さん、強いね」

 私の言葉を聞いて、グウィネスは大きな声で笑った。本当は明るくて魅力的な人なんだと思う。ランスロットが過去に好きになった人だから、当然なんだろうけど。

「私も、今まで知らなかったんだけど……人って失恋しては、失敗しては強くなっていくみたい。だから、貴女ではなくても誰でも。ランスロットが取られそうになったら、何度だって同じことするわよ」

「……もうしないよ。私は頑張るべき時に、何も頑張らなかった。自分には何も出来ない仕方がないと言い訳をして、誰かとぶつかることからずっと逃げていたんだ。こうして、思い通りにならない現実を受け入れるよ」

 その頃の詳しい経緯は私にはわからないけど、グウィネスには過去に後悔があるみたいだった。

「……これからはもう、自由よ。嬉しい?」

 私が彼女にそう聞けば、グウィネスはにっこり笑って頷いた。

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