破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 諭すようなラウィーニアの言葉に、心は揺れはした。何日も何日も泣き暮らす中で、彼の立場であればと何度も考える機会はあり。

 そして、さっきのラウィーニアの言葉で、いろいろなものが繋がったように思えた。

「……その婚前旅行って、誰が護衛に来るの?」

 尊い御身の王太子が、堅固に守られた城を出て遠出をするなら。凄く強い護衛が付くはずだ。例えば、筆頭騎士の誰かとか。

 遠慮がちにそう言った私の言葉を聞いて、ほっと安心したような息をついたラウィーニアは、私の頭を撫でて笑った。

「さあ……誰かしらね。でも、コンスタンスは私のお願いなら聞いてくれるから。同行する私の従姉妹が、自分の気に入っている騎士を指名すればきっと叶えてくれるでしょうね。行動も制限される窮屈な王族なんだもの。そのくらいの私情は許されるはず。彼らは仕事で護衛に来てくれるとは言え、美形の騎士は目の保養だもの……ディアーヌ。貴女の好きな騎士の名前を言えば良いわ」
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