【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「あのね、レイチェルにこのイヤリング、フリード殿下からの贈り物って言っちゃった」

「…………なんでそんなことを?」


 コーエンは怒っているというより、むしろ心底ビックリした、というように目を丸くした。
 クララは控室での経緯を話しながら、そっと首を傾げる。


(なんか、変な反応)


 困ったようなコーエンの表情。ちっとも理由が分からなくて、クララは眉間に皺を寄せた。


「なんだ、気づいたわけではないのか」


 クララから全部を聞き終わると、コーエンは小さな声でそう漏らした。


(やっぱり、イヤリングの贈り主はフリード殿下なのね)


 クララの心が音を立てて軋む。
 この場にクララを縫い留めるための宝石。けれど、クララは聞こえていない振りをした。


「ん……まぁ、そこは気にしなくて大丈夫。そっちの方が色々と都合がいいし」

「そう……んっ」


 クララの返事は、悪戯っぽい瞳をしたコーエンの唇に塞がれてしまう。頬を撫でられる感触。額が重ねられ、鼻先を擦り合うくすぐったさに、クララは身を捩る。


「…………俺のだから」


 何が?と問いかけたくても、甘く痺れた唇は、しばらくまともに動いてくれそうにない。

 何度も何度も唇を奪われながら、クララは深淵へと堕ちていく己を自覚していた。
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