【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
15.敗北宣言
「あら、どなたかと思えば。随分と久しぶりですね」
「……クララ、そう刺々しい態度を取ってくれるな。おまえが怒っていることは私も分かっているけれど」
宴もたけなわといった頃合い。クララは儀礼官に声を掛けられ、宴の間へと来ていた。
彼女の隣には緑色の瞳にダークグレーの髪の毛が特徴的な壮年男性が、困ったような表情で佇んでいる。この国の宰相であるワグナー・スカイフォール――――クララの父親だ。
「大事な愛娘の婚約を、本人の了承もなくほいほいと決めてしまったんですもの。怒って当然だと思います」
クララは言葉に毒を仕込みながら、ニコリと微笑んだ。
半ば騙し打ちで内侍として城に送られて以降、直接顔を合わせるのはこれが初めてになる。仲の良い親子だが――――いや、仲の良い親子だからこそ、許せないことがあった。
「お父様は、どれ程わたしが驚いたか……傷ついたのか、御存じですか?」
「――――すまない、クララ。殿下と陛下にどうしてもと頼まれては、私もその……断れなかったんだ」
ワグナーは面目無さ気に眉を下げ、チラリと宴の席へ視線を遣った。
主賓である使節たちのすぐ側。そこには王族のメンバーたちが列を連ねている。
クララと面識がない、ワグナーと同年代位の男性は恐らく国王陛下で、その周りを3人の王妃たちと、カール、ヨハネスが固めている。王子二人の隣から一つ席を空けて、親族筋の貴族たちが座っているらしい。
「……クララ、そう刺々しい態度を取ってくれるな。おまえが怒っていることは私も分かっているけれど」
宴もたけなわといった頃合い。クララは儀礼官に声を掛けられ、宴の間へと来ていた。
彼女の隣には緑色の瞳にダークグレーの髪の毛が特徴的な壮年男性が、困ったような表情で佇んでいる。この国の宰相であるワグナー・スカイフォール――――クララの父親だ。
「大事な愛娘の婚約を、本人の了承もなくほいほいと決めてしまったんですもの。怒って当然だと思います」
クララは言葉に毒を仕込みながら、ニコリと微笑んだ。
半ば騙し打ちで内侍として城に送られて以降、直接顔を合わせるのはこれが初めてになる。仲の良い親子だが――――いや、仲の良い親子だからこそ、許せないことがあった。
「お父様は、どれ程わたしが驚いたか……傷ついたのか、御存じですか?」
「――――すまない、クララ。殿下と陛下にどうしてもと頼まれては、私もその……断れなかったんだ」
ワグナーは面目無さ気に眉を下げ、チラリと宴の席へ視線を遣った。
主賓である使節たちのすぐ側。そこには王族のメンバーたちが列を連ねている。
クララと面識がない、ワグナーと同年代位の男性は恐らく国王陛下で、その周りを3人の王妃たちと、カール、ヨハネスが固めている。王子二人の隣から一つ席を空けて、親族筋の貴族たちが座っているらしい。