【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 遠慮なくカリーネが何をするのか、ということがラーシュには気になっていたが、彼女のことだから遠慮なくこのクズのような魔導具について、を語り出すのだろうと思っていた。

「ラベルゴ商会の魔導パン焼き機ですが。こちら、このストレーム国の安全評価基準を満たしていないことが判明しました。ですから、今後、このストレーム国で販売することはできません」

「だからだよ。どこがダメなんだ」

「え。もしかして、それをわざわざお聞きにいらしたのですか? 全て、その報告書に書いてあるじゃないですか」
 カリーネが口にした通り、何の試験を合格して何の試験が不合格だったのか、というのは全て報告書に記載してある。
 基本的には、不合格の項目があった時点で、認証委員会は申請者に対してどうするか、という確認を行っている。例えば、対策を取るのか、申請を取り下げるのか、など。だが、このラベルゴ商会は何も言ってこなかったため、そのまま試験を続行した結果、不合格という評価報告書となった。

「そうですね、まずはここ。安全に対する評価で、この魔導具が故障したときに保護回路が動くかどうか、ということを評価したものなんですが。保護回路を持ち合わせていないこのパン焼き機は、評価の結果、不合格です」

「は? 故障したときは、故障なんだから。そんなのどうでもいいだろう?」

「どうでもよくありません。故障したときに、使用者に怪我をさせるようなことがあってはならないのです」

「くだらない」

「くだらなくありません。それがこのストレーム国の基準になります」

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