【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
「これだよ。このラベルゴ商会がストレーム国で売るために、魔導具の評価依頼をしたこれだ」
 今回、ラベルゴ商会が評価の依頼をしてきたのは、あの魔導パン焼き機。あんな設計不良のようなパン焼き機でありながらも、扱っている商会が少ないことから、悔しいことにそこそこ売れている。今、レマー商会も増産体制をとっており、できるだけそれを求める人に届けたいと、工場(こうば)では頑張ってくれているのだが、それでもまだ需要に対して供給が追い付いていないのが現実。まして、このストレーム国にはまだまだ届いていない。自国のホルヴィスト分だけで精一杯。

「なんだ、この不合格。というのは」
 パサッと、ヘルムートはテーブルの上に評価報告書を投げ出した。

「ラベルゴ商会の魔導具ですのに、ヘルムート様がこちらをお持ちになっているのですね」
 カリーネがそう口にしたのはわざとだ。ラベルゴ商会に出資しているのはブラント子爵家。そこのスザンナとヘルムートが婚約したことだって、もちろん覚えている。

「そんなの簡単だ。俺がラベルゴ商会の人間だからな」

 なるほど。とうとうモンタニュー公爵家はラベルゴ商会にまで手を出した、ということか。そのためのブラント子爵家のスザンナとの婚約、と言っても過言ではなかったはずだ。

「そうですか。でしたら、遠慮なく」

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