【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 それでも朝食はハイケが準備をしてくれている。というのも、魔導パン焼き機を手に入れたため、それを気に入って毎晩セットしてくれるのだ。もちろん、リンもそれに興味津々。だからハイケは、リンにも魔導パン焼き機を使うことを許可していて、彼女は朝、この家にやってくるとパンの準備をする。そして帰り際、出来上がったパンを持って帰るという流れになっていた。カリーネとしては、この魔導パン焼き機の耐用年数、耐用回数が気になっていたところであるため(一応、耐用年数は三年で設計しているつもりだ)、たくさん使ってもらえることはありがたい。パン焼き機を使った記録だけは取らせてもらっていた。

 カリーネが敷地の門をくぐろうとしたとき、「おはよう」と声をかけられた。声の主はもちろんラーシュ。
「おはようございます」

「子リスちゃんが迷子にならないように、迎えにきたよ」

 子リスちゃんと呼ばれたことで、カリーネはまた頬を膨らませる。彼はことある如くカリーネを子リスちゃんと呼んでからかってくるのだ。そしてカリーネが頬を膨らませると、それを指でつついて空気を抜く、というところまでがいつもの流れ。

「子リスちゃんの頬袋には、今日も食べ物は入ってないみたいだな」
 カリーネの頬を潰したラーシュは、楽しそうにそんなことを口にする。
「顔色もいいし、ほっぺたもつやつやだね。よく眠って、ご飯もきちんと食べたみたいだな」

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