【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
3.伯爵令嬢、学校へ行く
 カリーネが魔導具士養成学校に通うにあたり、諸々の準備を手伝ってくれたのがラーシュという男だった。カリーネのことを子リスちゃんと呼びながらも、その手際の良さはフランを彷彿とさせるものがある。彼がストレーム国に留学しているときにつるんでいた相手ということだけのことはあった。

「いってきます」
 背中までの髪を一つの三つ編みにまとめたカリーネはリュックを背負い、ハイケに声をかけてからその自宅兼工房を後にした。ダッチドアの玄関の向こう側から、「いってらっしゃい」とハイケはにこやかに手を振っている。
 ハイケと始まったこの二人暮らしだが、思っていたよりも快適だった。掃除や洗濯や料理などは自分でしなければならないのかな、と思っていたら、なんと通いのお手伝いさんがいるらしい。ハイケが言うには、やはり仕事が忙しくなってしまうと、そちらの方に手が回らなくなってしまうこともあるから、とのこと。
 お手伝いさんの名前はリンという。年齢は五十代らしい。子育ても落ち着いたので、というのがその仕事をしている理由。朗らかで明るい人。カリーネを一目見た時には、年相応に見えないことに大変驚いていたが「もしかしたら成長がゆっくりなのかもしれないですよ」ということを口にした挙句、ご飯をしっかり食べてよく寝ましょう、なんて念を押されてしまった。誰もがカリーネにはご飯を食べさせようと躍起になり始めている。

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