夢の中だけでもいいから私に愛を囁いて
帰国して
日本に戻ってきたのは15年ぶりだろうか。
16年前に起きた突然の妻の死に耐えられず、仕事も儘ならなかった自分に高校時代の後輩で、自社の社長子息である城田浩一が『一緒にアメリカに行こう』と誘ってくれて日本を離れたからだ。
当時しばらくは新天地でも塞ぎ込んでいたのだが、浩一がアメリカ支社の立ち上げのために一旦動き出したらその過密スケジュールに付き合わざる負えなくなり、沈む時間などなくなっていった。
浩一が言うには「俺が荒れてた時に救ってくれたのが先輩なんで、今度は俺が救う番かな…って思っただけですよ。恩返しだから気にしないで、その分は仕事で返してくださいね」と言うことだった。
彼が副社長に就任することが決まり日本へと戻って5年が過ぎた頃に、日本に戻って来て欲しいと連絡があった。
「そろそろ日本に戻っても仕事くらい出来ますよね。とりあえず、先輩に俺の補佐的な役をお願いしたいんですよね」
そう頼まれ、日本に戻る決心をした。
帰国後、一番に向かった先は亡き妻が眠っている墓地だった。